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旅は冒険に満ちすぎる。インドネシア孤島の旅(6)


島にはロスメンは何ヶ所かあったが、話を聞いているうちに、オーストラリア人夫婦おすすめの高床式のバンガローに決めた。

それは島の中のロスメンの中では飛び抜けてリッチだ。林の中に点在していて、バルコニーもついている。 部屋は焦げ茶色の落ちついた作りで、ピカピカに掃除が行き届いている。 
壁にはバリ島の踊りに出てくる神様のお面が飾ってあった(ちょっと怖い)。 

バルコニーに面した大きな窓際には、清潔でふかふかのキングサイズのベッド。
カーテンを開けると涼しげなヤシの林の向こうに真っ青な水平線が見える。 
奥には白檀のドレッサー。これもステキだ。(が、例の巨大なインドネシア蚊取り線香が置いてあってギョッとする) 

このうえないリッチな環境だが、ここに一週間ステイしても日本円で1万円もかからない。 
何よりエアコン完備は最高だった。が、島は1日何度も停電するので思ったほど役に立ちそうにもない。

部屋の向こうには広くて清潔な洗面所がある。浴槽はないが、シャワーの栓が「HOT/WATER」になっているのを見て心がときめく

事は砂浜を歩いて数分のコテージレストランに行く。 私は滞在中、朝晩そこで「サユール・アサ厶」という野菜の塩味スープとパンを頼んだ。それしか食べないので、 「君はベジタリアンか?」と言われたが、そうじゃない。 こんな孤島で食の冒険をして腹を壊したくなかったのだ。

停電でエアコンが消えると、どこからともなくハエがやってくる。必ず来る。 これが非常にうるさい。蚊取り線香を焚くと、ハエも蚊もどこかに消えていくのだが、私にも危害を与えてくる。蚊取り線香の煙が漂ってくると、目が痛くなり、次にふわふわと目まいがしてくるのだ。 さらに困ったことには、ほっとくと、ぐらぐら目まいがし始める。
慌てて線香を消すと、めまいは消える。が、どこかに隠れていたハエや蚊が戻ってくるイタチごっこだ。

しかしまぁ、そんなことを気にしていたらこんな辺境では暮らせない。日本製の蚊取り線香を持ってくればよかったと思いもしたが。。。多分こっちの蚊やハエにはまったく効かないのだろう。

他のおんぼろロスメンは、ダニがいたりして大変なんだという。それに比べてこの素晴らしいコテージはどうだ。ラッキーとしか言いようがない。

ただし、ひとつやられたのは、シャワーのことだ。
「HOT/WATER」これは誇大表示はなはだしく、どちらにひねっても「海水」しか出なかった。小さな洗面台の水は真水のようだ。 せっかく温かいシャワーを浴びることができると思ったのに、これではどうしようもない。 困惑し、受付に相談するも、現地人も困惑するばかりだ。なんせ彼らは「HOT/WATER」という表示の「HOT」という存在自体が不思議と言うぐらいなのだ。湯を浴びたり風呂に入る習慣がない。 彼らは水瓶の水をひしゃくにとって一日二回の沐浴をするだけだという。 うーん。。。じゃぁどうして「HOT/WATER」などと書くのだ!?なんかオシャレっぽく見えるからか?(多分そうなのだ。泣)


しかし、いくら何でも水浴びではどうしても疲れが取れないのが日本人のサガだ。 
仕方ないので毎日レストランで夕食をとった後、ポットに入れた熱湯をもらうことにした。 
それも一本じゃ足りない、二本欲しい。というと、え?二本も何に使うのです? という表情だ。 

「お湯を浴びるんですよ、hotシャワーの代わりに!」と言う。 
おまえんとこのシャワー海水しか出ねーんだもん!

「え〜?この暑い島でわざわざ熱い湯を浴びるんですか? 変わった人だ」という表情でウェイターが台所に引っ込む。

私はでんと置かれたポットを両手に持ってニンマリ笑う。 「ツリマッカシー(インドネシア語でありがとさんの意)」
いいんだいいんだ、どうせ変わった人なんだと開き直りながらバンガローに戻る。 

ポットの湯を洗面台でぬるま湯に変換して、ばしゃばしゃ浴びる。
そういう生活のスタートなのだ。 まぁ湯があるだけ感謝せねばならない。 

夜は電気を消してベッドに寝そべると、カーテン越しに波音が聴こえてきた。
カーテンを開けると、月明かりで照らされたヤシの陰。満点の星。きらりと光る水平線。
まるで楽園写真を見ているようだった。

その頃のギリメノは、過去45年間で訪れた観光客がわずか20人しかいない
本物の辺境の島だった。


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