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旅は冒険に満ちすぎる。インドネシア孤島編(4)


バンサルの船着き場まで行く人はいませんか? という声がする。

初老の男性と、隣には彼の2倍はありそうな体格のよい奥さんがいて、スーツケースを脇にこちらを眺めていた。

私はばかみたいに「はい!」と手を上げた。

ジョグジャカルタでボートの設計をしているヨーロッパ人ら他に4人がライトバンタクシーに乗り込んでロンボク島の船着き場に向かった。

オーストラリアから来たという初老の夫婦は気さくで、旦那さんはインドネシアに赴任経験があり、現地語に堪能で大変助かった。この夫婦が同じ島を目指していることは、私にとってどんなにラッキーだったかわからない。だって、私ひとりでこのタクシーをチャーターすることはとてもできなかっただろう。運転手は見るからに目つきが鋭く、どこからみても白タクだ!

しかし白タクも、この夫妻のおかげで何の心配もなく切り抜けることができた。
もし彼らがいなければ、今ごろ私はロバ馬車「チドモ」に乗ってヤブ蚊と猿だらけの山道を延々と行かねばならなかったのだ。考えるだに恐ろしい。 

ロンボク島は私の目にはすさまじく未開の土地に見えた。 
日に灼けて無駄な肉のない上半身をあらわに腰バティック一枚で、頭の上に大きな網かごを乗せて道端を歩いて行く女性たち。観光客が足を踏み入れるはずもない非文明的な村のたたずまいや、たき火を囲む彼らの生々しい生活を森の間にかいま見る。 

ほとんど裸の子供たちも、家の手伝いなのか、器用に頭の上にヤシの実を入れたカゴを載せて歩いている。 野生の猿が木々を渡り、群れ、牛がのそりと道の真ん中を歩いている。 

私はあまりにも突出した冒険に踏みこんだのではなかろうかと半ば不安にもなっていた。 
なんといっても、くねくねした山道を揺られているうちに車酔いとも闘わねばならなかった。 

何にもない田舎の船着き場に到着し、タクシー代を割り勘にしたあと、船が出るまで2時間。 そこには掘建て小屋、あるは駄菓子屋のような売店(舟のチケット購買所)があるだけだ。 

どこにも行く気にならず、売店の日陰にしゃがんでしばらく休む。

軒先には売店に飼われている猿がいて、私の視線の先で木の実を剥いている。 首輪がしてあって、客に飛びかかって悪さをしないよう紐で結わえてある。看板猿だ。 

近くにいる野生の猿たちが、その食べ物をちょっと分けてくれないかとちょっかいを出そうとすると、看板猿はたちまち彼らを威嚇し、蹴散らして、ふんぞり返って傍らの食い物を貪っている。まさに、サルだ。人間の縮図みたいでうんざりする。 

静かだった。

牛車が土煙をあげてガッチャガッチャと通りすぎ、その後ろで牛糞を集める子供たちの声がするだけで、あとはひたすら目の前に打ち寄せる波音しかしなかった。

オーストラリア人の夫婦はダイビングが趣味だという。 

「グレートバリアリーフも素敵だけど、もうあまりきれいじゃない。青珊瑚のスポットはやはりメノ島のあたりが一番だ」という。

やはり情報は間違っていなかった。ここまで来てガセネタだったら目も当てられない。 

あとはボートに乗るだけ。
2週間、何も考えずにアイランダーになる。 
好きなだけサンゴを眺め、魚と泳ぐことを考えると少し気分がよくなった。

ま、この後、このアイランダーにはとてつもない悲劇が起こるんだけどね。。。


つづく
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